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クリエイターインタビュー

プロデューサーが語るゲームへのこだわりとガルリフならではの個性

アニメ『ガールズバンドクライ』(以下、『ガルクラ』)の世界を広げるゲーム『ガールズバンドクライ First Riff』(以下、『ガルリフ』)。

トゲナシトゲアリ、ダイヤモンドダストに加え、新たに登場する3つのバンドは、それぞれ異なるクリエイターと音楽会社によって生み出され、現実のステージでも活動していく。

『ガルクラ』が大切にしてきたリアリティを、『ガルリフ』ではどう表現するのか。東映アニメーションの佐藤氏と、DONUTS GAMES の原岡氏に、企画の出発点から物語、音楽、ライブ映像へのこだわりなどを聞いた。

プロデューサーの佐藤さん(写真左)とゲームプロデューサーの原岡さん(写真右)

アニメの企画段階で感じたクリエイターのこだわり

──まず、お二人の本作での役割を教えてください。

佐藤:東映アニメーションのデジタルプロダクト推進室でプロデューサーをしている佐藤です。今回、『ガールズバンドクライ First Riff』のプロデューサーとして、このプロジェクトに携わっています。

原岡:株式会社DONUTSのゲーム開発スタジオ「DONUTS GAMES」でプロデューサーをしている原岡です。本作では開発側のプロデューサーとして、ゲーム開発の責任者という立場で参加しています。

 

――『ガルリフ』の企画は、いつ頃から動き出したのでしょうか。

佐藤:『ガールズバンドクライ』は、弊社(東映アニメーション)の平山理志プロデューサーがアニメの企画を立ち上げたときから、メディアミックスを前提に進めていた作品です。

そのため、ゲームの話も最初からありました。東映アニメーションはゲーム会社ではないので、一緒にゲームを作るパートナーを探している中でDONUTSさんや同社の原岡さんと出会い、本格的にプロジェクトが始まりました。

原岡:2023年頃ですね。僕もちょうど新しいゲームを立ち上げたいと思っていて、一緒にものづくりをするパートナーを探していました。DONUTS GAMESはゲーム開発やライブを得意としていますが、大きなIPを作っていく部分では、そのプロと一緒に取り組みたいと考えていたんです。

そんなとき、以前一緒に仕事をしたプロデューサーさんから、佐藤さんを紹介していただきました。その頃はまだアニメの放送前で、MVが1本、脚本と企画書があるくらいの段階でした。

でも、作品を見た瞬間に、関わっているクリエイターの方々のこだわりが伝わってきたんです。「『ガルクラ』は絶対に成功する」と感じて、社内でもゲーム化を強く提案しました。

――どのようなところに、そのこだわりを感じましたか?

原岡:脚本を読んでも、仁菜が最後にどうなるのか、まったく想像できなかったことです。僕は音楽に関わるゲームや女性キャラクターを扱う作品に携わることが多いのですが、そうした作品では、目指す場所があって、そこへ向かっていく物語も多いですよね。

『ガルクラ』は、いろいろな作品を見てきた人も、作っている側も、先が読めない。今のアニメの中で新しいことをやろうとしているんだな、と感じました。

 

――お二人の初対面時の印象を教えてください。

佐藤:初めてお会いしたときから、原岡さんはゲームに対する知識や理解がとても深い方だと思いました。

キャラクターや物語はもちろん、音楽をどうすればお客さんにきちんと伝えられるかということも、熱く議論してくださって。この方なら面白いゲームを作ってくれる、任せられると感じたことを覚えています。

原岡:佐藤さんは、僕の「こういうゲームを作ったら面白い」という提案を、とても真剣に聞いてくれました。最初にお会いしたときから、今も変わらず、頼れる兄貴のような存在だと感じています。

川崎に息づくバンドのリアリティを大切にする

――ゲーム化にあたり、『ガルクラ』らしさをどのように捉えましたか。

佐藤:平山と話していて、よく出てくるのが「地に足のついた話かどうか」という言葉です。平山は『ガルクラ』について、次のように語っています。

「仁菜は高校を辞め、一人で上京して、川崎の安いアパートで暮らしながらバンドを始める。明るい未来が簡単には見えない今の時代に、そういう子の怒りや悔しさをごまかさずに描く。それが『ガルクラ』の芯だと思っています。もう一つは“本物のバンドであること”です。演奏できるメンバーを一から集め、そのメンバーがキャラクターの声も担当する。音楽が本物でなければ、仁菜たちの本気も嘘になってしまう」と。

これらは、平山が最初から大切にしている部分で、自分たちも強く意識したポイントです。

原岡:僕も、リアリティの追求はとても重要だと思っています。企画を立ち上げて最初にしたことの一つが、開発のコアメンバーと川崎へ行くことでした。ディレクターやクリエイティブディレクターと、アニメに登場した場所だけでなく、キャラクターたちが生活しているであろう場所も巡りました。

その後も、背景のデザイナーやシナリオライターが別の日に訪れていて、チーム全体で何回行ったのか分からないくらいですね。

 

――実際に川崎を歩いて、印象に残ったことはありますか。

原岡:川崎駅前で、本当に路上ライブをしていたことです。アニメで見てはいたものの、実際にどのくらい演奏している人がいるのか、僕は知らなかったんです。

平日の夜に行ってみたら、仁菜たちが演奏していた路上の場所で、バンドの人たちが音を鳴らしていた。「川崎って、本当に音楽の街なんだ」と感じました。その空気を、『ガルリフ』のなかでも再現したいと思ったんです。

トゲナシトゲアリも、新しく登場するバンドも、川崎で生活しながら成長していく。その姿を背景やストーリーで見せて、キャラクターが本当にそこで息づいていると感じていただくことを大事にしています。

 

――そのリアリティは、『ガルリフ』の世界観にもつながっているのでしょうか。

佐藤:大切にしたのは、「ゲームだから」という理由で嘘をつかないことです。

ある日突然、バンドがスターになるのではなく、ツアーで各地を回り、ライブを1本ずつ積み重ねていく。思い通りにいかない日もあります。その日、その場所での選択を積み重ねながらバンドが育っていくことが、毎回違う展開になる遊びにもつながっています。

原岡:ストーリーやシステム、画面のUIデザインまで、ロックを感じられるかということも大切にしています。企画の段階では、音楽の専門学校やロックミュージシャンの方々にもお話を伺い、企画書を見ていただきました。

実際に音楽をやっている人から見て、キャラクターの生き方や選択が嘘になっていないかを確かめたかったんです。バンドが100組あれば、目指す場所も100通りあると思います。

有名なアーティストのようになりたい、ある事務所に入りたい、音楽チャートで評価されたい。その目標を一つに集約するのではなく、この子たちが本当にいたら何を目指すのか、ということを考えて、バンドごとの人生を描いています。

特にトゲトゲについては、アニメとは異なるオリジナルのシナリオを用意させていただいたので、楽しみにしていてください。

――音楽を中心に置きながら、リズムゲームとは異なる形を選んだ理由も教えてください。

佐藤:『ガルクラ』の精神と、ゲームとしての面白さを両立させたかったからです。

ゲームの都合で作品の芯がぶれてしまっては意味がありません。音楽が真ん中にありながら、バンドを育てていく。その形を一緒に考えてきました。

並行して、新しいバンドのメンバー選考や楽曲制作も進めていて、ゲームとバンドの両方がしっかり立てる状態を目指して作っています。

音楽も物語も異なる3つの新バンド

――新しいバンドを3組登場させることには、どのような意図がありましたか?

佐藤:『ガルクラ』には、もともとトゲナシトゲアリとダイヤモンドダストという、考え方の違うバンドがいました。同じ街にいても、バンドを組む理由や目指す場所が違う。ゲームで世界を広げるのであれば、その違いこそ描きたかったんです。

ガルクラの音楽を一つの色に寄せず、それぞれの強みを生かすことが、『ガルリフ』の個性になると考えています。

原岡:トゲナシトゲアリの音楽は激しく、仁菜の性格ともつながっています。その音楽はすごく魅力的ですが、ガルクラの中で、別の切り口の音楽も届けられないかと考えました。

トゲナシトゲアリにすべてを担ってもらうより、作りたい音楽のイメージに合ったバンドを新しく作り、キャラクターやストーリーも含めて描く方が自然だと思ったんです。

ロックにも、いろいろな音楽があります。『ガルクラ』を通してロックを好きになってくださった方に、違うジャンルや新しい音楽も聴いて、楽しんでいただきたいという気持ちがありました。

 

――物語やキャラクターも、バンドごとに異なる制作チームが担当しているそうですね。

原岡:各バンドに専任のシナリオライターさんがつく形にしています。そのバンドの成長や未来、ストーリーに集中していただきたかったからです。

Canna Lilyは、DONUTSの社内チームで作っています。『ガルクラ』が好きなメンバー、この作品で表現したいことがあるメンバーを集めて、一から生み出したバンドです。デザインも社内で手がけています。

F-272はまた別の味わいを持ったものにしたいと考え、いろいろな作家さんを探す中で、Hellartsの橋元優歩さんにお願いしました。『アイドルマスター シャイニーカラーズ』での脚本も読ませていただいていたのですが、キャラクターの心情をとても繊細に描かれる方なんです。

言葉にしない感情や、表に出ない機微まで表現できる。そうした作風を生かした物語を、ぜひ書いていただきたいと思いました。キャラクターデザインは、同じくHellartsの今井翔太さんにお願いしています。

 

――クズミミズクは、どのように生まれたのでしょうか。

原岡:激しいトゲナシトゲアリ、抒情的なF-272とはまた違う、テンションの高い、ポップなバンドを作りたいと考えていました。

そこで、以前一緒に仕事をしたことのある渡航先生に、「ガルクラの新作でバンドを一つ作ってほしい」とお声がけしたんです。すると「ガルクラが好きなので、自分なりのアンサーソング、ラブソングとなるようなバンドを作りたい」と言ってくださって、すぐにお話が決まりました。

そこで作っていただいたのが、等身大の女の子たちによるバンド・クズミミズクです。

イラストレーターをどなたにお願いするか相談したときには、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』で渡先生と組んでいた、ぽんかん⑧さんのお名前が出ました。「また新しい作品を一緒にやってみませんか」とお声がけしたら、「渡先生ともう一度やってみたいです」と言ってくださって。このお二人にお願いすることになりました。

佐藤:現実のバンドも、曲を書く人が違えば、鳴る音が違いますよね。本当に異なる物語を描くなら、書く人から変えるのがまっすぐなやり方だと考えました。

それぞれのクリエイターの得意なことを信じて、細かく型にはめずにお任せしています。共通して共有するのは、ガルクラという作品への向き合い方。地に足がついていて、その子たちが本当にそこにいると感じられる物語であることです。

一方で、キャラクターの最終的な絵は、アニメのキャラクターデザイナーである手島nariさんのタッチに合わせて仕上げています。生まれたところは違っても、同じガルクラの世界に立っている子たちだと分かるようにしています。

ライブ映像で伝えるキャラクターの感情

――『ガルリフ』のライブシーンでは、どんなことを大切にしていますか?

原岡:アニメ本編のライブシーンがとても好きなので、ゲームでも、ドキドキして何度も見たくなる映像を作りたいと考えています。

ライブは、ただ演奏する場面ではなく、バンドの子たちの感情が最も高まる場面です。何を思い、どんな気持ちを音に込めているのか。それを、映像の中でも伝えたいと考えました。

たとえば、演奏が盛り上がったところで、街全体が音楽に包まれるようなシーンがあります。

音は目には見えませんが、ロックの音楽が街に広がっていく様子を、映像ではどう見せられるのか。開発チームと相談しながら、街が音に飲み込まれるような表現まで考えて作っています。

現実では起こりえない演出も交えながら、彼女たちの心情を感じていただけるライブシーンにしています。

――演奏するキャラクターの動きにも、こだわっているのでしょうか。

原岡:モーションキャプチャーでは、プロのアーティストの方に実際に動いていただき、その動きを『ガルリフ』ゲームに取り入れています。

収録の現場でも、どうすればより魅力的に見せられるかを相談していますし、映像になったときに格好いいポーズになっているか、そのキャラクターらしい動きになっているかという点も大切にしています。

リアルな演奏と、キャラクターの魅力の両方を見ていただきたいですね。

佐藤:キャラクターのモデルは、『ガルリフ』用に一から制作しています。『ガルリフ』ならではの3D表現にも注目していただけたらと思います。

ガルリフで出会ったバンドが現実のステージで音を鳴らす

――新バンドの音楽制作や、現実での活動は、どのような体制になっていますか。

原岡:Canna Lilyは、DONUTSとASOBISYSTEMの共同プロデュースです。両社で開催した「ガールズバンドオーディション」で選ばれた5人で、サウンドプロデュースはSCRAMBLESの松隈ケンタさんにお願いしています。

F-272はB ZONEさんにバンドのプロデュースと楽曲制作をお願いしています。クズミミズクは、トゲナシトゲアリやダイヤモンドダストを手がけてきたagehaspringsさんに加えて、キングレコードさんにも参加していただいています。

佐藤:トゲナシトゲアリはユニバーサルミュージックさんなので、4つのバンドが、それぞれ違う音楽会社とともに活動する形になります。

――バンドごとに、異なる音楽会社と取り組む理由を教えてください。

原岡:バンドが生まれた場所は、あくまでゲームです。そのうえで、現実のステージで演奏し、ファンの方と向き合っていく部分は、音楽のプロに託したいと考えました。

各社にキャラクターやストーリーを見ていただき、どのバンドに興味を持っていただけるかを相談して、それぞれに納得していただいたうえでお願いしています。ゲームでキャラクターを好きになった方が、その音楽を会場で直接聴く楽しさも味わえるようにしたかったんです。

佐藤:音楽会社には、それぞれ得意な音楽や見せ方があります。それを一つの型にそろえるのではなく、そのまま生かしていただく。チームでは「違っていいのは個性、そろえるのは信頼」という言葉を使っています。

それぞれが本気で取り組むことで、お互いを意識し、高め合う関係にもなっていくと思っています。

 

――『ガルリフ』ゲームと現実のバンド活動は、どのようにつながっていくのでしょうか。

佐藤:すべてのバンドを同じタイミング、同じやり方で動かそうとは考えていません。『ガルリフ』ゲームの外での活動には、バンドごと、音楽会社ごとのペースがあっていい。

現実のバンドも、みんな同じ歩き方をしているわけではありませんから。ゲームでバンドを育てていて、ふと気づくと、そのバンドが現実のステージでも演奏している。

育てていたのは、ただのキャラクターではなかった。そう感じていただける瞬間を、それぞれの形で作っていきたいですね。

原岡:音楽のプロである各社が、この子たちをどう育ててくださるのか、僕自身も楽しみにしています。キャラクターもバンドも、それぞれ違う人生を歩んでいく。その姿を、みなさんにも楽しみに見ていただけたらと思います。『ガルリフ』ゲームを長く続けていきたいですし、ライブもずっと続いていってほしいですね。

 

――最後に、『ガルリフ』を楽しみにしているファンのみなさんへメッセージをお願いします。

原岡:『ガルクラ』が好きだから関わりたい、この作品の世界を広げるために一緒に仕事をしたいと、優秀なクリエイターや音楽会社の方々が集まってくださっています。

すでに発表している映像やライブなどへの反応からも、バンドごとに違うファンの方がついてくださっている手応えを感じています。いいゲームができつつありますので、楽しみにお待ちいただけたらと思います。

『ガルリフ』をプレイしていただいたら、ゲームだけでなく、ライブやイベント、グッズなども通して、『ガルリフ』ガルリフを好きになっていただけたらうれしいです。

佐藤:アニメから応援してくださっている方にも、ここで初めて『ガルクラ』に出会う方にも楽しんでいただける作品を目指しています。

音楽への入り口が4つあることで、アニメとは違うところから作品を知ってくださる方もいると思います。それぞれのバンドの個性を入り口に、輪が広がって、『ガルクラ』や『ガルリフ』にいろいろな方が集まってくださったらうれしいです。

『ガルリフ』でも、ステージでも、みなさんとお会いできるのを楽しみにしています。